北野武&ビートたけし好きな僕がおすすめ本と映画を総まとめする

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北野武、ビートたけしのすべて

Kitano par Kitano: 北野武による「たけし」 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

北野武、僕が尊敬して止まない人物。本はこれまでに50冊以上出ており、映画は17本撮影している。(wikipediaより)

北野武という名前だけ聞けばほとんどの人がコメディアンでバラエティ番組で馬鹿やってる印象が強いはず。でも、実は映画監督であり、作家であり、画家でもあり、落語家でもあり、数学の天才でもある。趣味も多彩でピアノ、タップダンスとあらゆることに関心が強く精通している。

僕自身もこの方を目標としている部分が沢山あって本当に尊敬してもし尽くせない。僕の個人的な感情だけではあるが熱意を持ってここに全てまとめてみる。

北野武/ビートたけしのおすすめ本

紹介したい本は本当に沢山あって、文庫本、自伝、小説、詩集、絵本といろんなジャンルの本をこれまで書いてきている。面白かった本はもちろんだけれど、できる限り幅広いジャンルの本をまとめていこうと思う。

ユリイカ総集編 北野武そして/あるいはビートたけし


▶︎ユリイカ1998年2月臨時増刊号 総特集=北野武そして/あるいはビートたけし

俺は日本映画のガン。早く駆逐しなさい!

北野武、山根貞男の対談にて

1998年に臨時で発売されたユリイカの北野武総集編。初めは映画”HANA-BI”についての記述が多いが、映画監督としての北野武について語りつくされ、個別インタビューや北野武とゆかりのある人物からの寄稿、北野武の出演するテレビ番組、著書、映画について全318ページ丸ごと北野武!かなりのボリュームがある。映画監督としての北野武はもちろん、あらゆる視点からの北野武を知りたい人マニアは是非読んでほしい。というか、総集編なので話題はとにかく北野武オンリー。本当に好きじゃないと買わない本だと思う。

もちろん、ファンなので買ってます(笑)

全思考 北野武

作法というのは、突き詰めて考えれば、他人への気遣いだ。具体的な細かい作法をいくら知っていても、本当の意味で、谷を気遣う気持ちがなければ、何の意味もない。その反対に、作法なんか良く知らなくても、ちゃんと人を気遣うことができれば、大きく作法を外すことはない。駄目なヤツは、この気遣いが全くできない。人の気持ちを考えて行動するという発想を、最初から持っていないのだ。

本文より引用

2009年に発売された文庫本。本の中身は主に「北野武」としての嘘偽りのない真面目な素顔や考え方が記されている。テーマも深くて、映画、人間関係、作法、生き方、教育、人間関係と彼の現代社会における哲学が語られている。この本のあとに「超思考」という本も発売されているが、いわば北野武そのものが本になった感じ。

アウトレイジっていう暴力映画も撮っているけど、あらゆる作品の根底にあるのは優しさと謙虚さと勉強熱心な彼から出てくる知的で幅広い視野からの物の見方、そして逃げずに直視し続ける日常の残酷さと無念さだということが分かる。もし、北野武とかビートたけしとかあんまり知らないという人がいたら真っ先にオススメしたい本。

下世話の作法 ビートたけし

自分探しは全部プラス思考じゃないか。変だなぁ、どうして逆の発想ができないんだろう。プラスじゃなくてマイナス思考で考えれば「こんなことをしないで、もっと地道に暮らそう」となるけど、それだって自分探しのはずだよ。俺は何の才能もない、ただ普通に働いて結婚して、子供をつくりゃいいんだって何で考えないのかな。

本文より引用

やっぱり北野武は一流なんだなーと思わせられる本。主に「粋」な生き方や立ち振る舞いって何?とか下品の定義から悪口を言う時まで、あらゆることが軽率じゃなくてしっかりと考えられていて納得させられる。食事、テレビ、政治まであらゆる「ここおかしいよね?」をズバリと言い当てる北野武の価値観とか振る舞いがもう一度自分自身の行動を見直させてくれる本。でもやっぱり根底にあるのは優しさなんだろうなぁ。

ビートたけし童話集 路に落ちてた月

コメディとかテレビで馬鹿やってる人が書いたとは思えないほどのギャップにやられること間違いなし。信じていたはずなのに報われない人、不平等な社会、残酷さを無視することなく世の中の不思議と面白おかしさを自分自身の経験をもとに童話にしている。

あまのじゃくというか、何かを信じて盲目的になることの危険というか皮肉を上手く語っている。僕が本の中で好きな一節を紹介しておきます。

男の子は、牛の名前を、それぞれ太郎、次郎と名付けました。太郎は、男の子が一生懸命育てると、その子に懐き、ご飯もたくさん食べました。あまり良い牛なので、男の子も一生懸命毛づくろいをしたり、洗ったり、干草をたっぷりあげました。でも、次郎のほうは気性が荒く、男の子がちょっと触ろうとしようものなら怒り、辺りを散らかし、困らせてばかりです。そして、いつまでたっても餌をたくさん食べません。10年が過ぎました。太郎は、丸々と太った立派な牛に育ち、高い値段で売られていきました。次郎は、相変わらず痩せていたので、買い手も無く、のんびりと畑で寝転んで暮らしました。

本文より引用

何が正解なのか、別の視点から見たときに世間的に「良し」とされていることって本当に良いことなの?あらゆる世の中の思考と発想の常識に切り込んでいく感じ、めっちゃ好き。

僕は馬鹿になった 北野武

これ読むと、ビートたけしって実はすごくロマンチストなんだなぁって思う。ビート武が独自にノートに書き溜めていた詩集を本にしたもの。たけし自身の恋愛観も覗かせている。実はすごく感性が鋭くて繊細な人なんだなぁと思って、こういう人が映画を撮るべきなんだろうなと思わせてくれる。

人は何か一つくらい誇れるもの持っている 何でもいい、それを見つけなさい 勉強が駄目だったら、運動がある 両方駄目だったら、君には優しさがある 夢を持て、目的を持て、やれば出来る こんな言葉に騙されるな、何も無くていいんだ 人は生まれて、生きて、死ぬ これだけでたいしたもんだ

本文「騙されるな」より引用

金、とにかく金を稼げ、それで何でも買ってみろ

愛、恋、友情、幸福、みんな買えたか

それから、金で買えないものを探せ

本文「金」より引用

虫のいい言葉だけで固められた励ましよりも、この本の方がずっといい。もっと深くて、もっと人間臭くて、もっと不器用な言葉が逆に励ましたり元気をくれる。根本的な部分から考えさせてくれるのはさすが北野武だなぁと思う。

たけしの落書き入門 ビートたけし

本も映画も書いてそれでまで書く。もともとたけし自身は工学部で生粋の理系出身だけど、だからこその憧れというか芸術というある意味未知の分野に惹かれていったのかもしれないなぁと。本書の中には映画”HANA-BI”の中に出てくる頭が花びらの動物も出てくる。

もちろん、お決まりのギャグっぽい絵からこれ下ネタだよねっていう絵まで様々。というか下品な絵も沢山出てくるし、本人は本当に落書きのように楽しんでるんだろうなぁと思う。色んな絵や描き方にもチャレンジしていて、浮世絵、油絵、点描など多彩な絵を描いてる。本当のたけし好きの人はコレクションとして持っていて損はなし。

ほしのはなし 北野武

2012年に出版された北野武の絵本。ここでもロマンチスト全開でもし子供が出来たら絶対に買ってあげようと企んでいる一冊。本も作りこまれていて開くだけで楽しめるようになっている。福岡であればある程度郊外に行けば星を眺めることはできますが、それでも長野とか間近で綺麗な星を見る機会は都会にいれば少なくなってきます。ちょっとした忙しい毎日の中で、空の星の存在を忘れかけてる大人が見開いてもグッとくる。

FAMOSO DIARY 北野武 所ジョージ

言っちゃうけど隅から隅まで本当にくだらねーほど馬鹿げた雑誌(笑)。逆にそんな遊びがめちゃくちゃ羨ましかったりする。本当に好き勝手書いてて、ギャグなんだけど本当に真面目な論調で書かれたりしてて。かと思えば、次のページは広告でこれもまたギャグ(笑)怪しさ満点のページが初めから終わりまでずっと永遠に続く雑誌なんてこの2人じゃないと書けないと思う。大人になってもこういう遊び心を忘れない人たちって素敵。

少年 ビートたけし

その望みに少年は全身でぶつかっていく。余分な知識やテクニックはない。だからこそぶつかってはね返った衝撃の大きさも全身で知る。勝ちも負けも快感も大きい。間違いも思い込みだって大きい。そしてオレは四〇歳になってもそんな少年に憧れている。

本文より引用

北野武の小説といえば浅草キッドとか菊次郎とさきとかが有名だけれど一番最初に出たのがこの少年。1992年に発売されてて正直僕自身はまだ小学生にもなってないのだけれど、たまたま親父が自宅に置いていたので読んだのが初めのきっかけ。3編の物語にはどれも良さがあって、個人的に覚えてるのは兄弟でシリウスという星を探す「星の巣」。これ以降、何冊も北野武の本は読んだけどやっぱり星の話やその考察には感心してしまう。

北野武のおすすめしたい映画

映画監督としての北野武の作品って評価がかなり割れることで有名。フランスの有名なヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞したHANA-BIを初めに暴力映画からギャグ映画まで幅広く撮っている。その中でも気になる作品を紹介しておく。

HANA-BI

 


▶︎HANA-BI [DVD]

北野映画を語る上で言われている「キタノブルー」という手法が使われている作品。画面全体に青色のトーンが使われ、そこに色鮮やかな絵などを持ってきて強弱を引き立たせているとされる。本編では生と死の対比があらゆるもので表現されていて、映画タイトルの「花ー火」も明るく生きること「花」と儚く消え去っていく「火」の生死の対比とされている。あらすじ、ネタバレはこちらの記事がよくまとめてありましたので紹介させて頂きます。

▶︎映画『HANA-BI』あらすじネタバレ結末と感想 | MIHOシネマ

アウトレイジ


▶︎アウトレイジ [DVD]

北野武の映画といえばコレ!という人も多いはず。代表的なヤクザ映画であって豪華キャストを使ったドンパチ映画「バカヤロー!」「コノヤロー!」のオンパレードで、暴力シーンもえげつない。世の中の悪人が観たくなったら、真っ先にTSUTAYAで借りたい作品。アウトレイジビヨンドの時のインタビューだけど、北野武自身の暴力について語ってる記事も面白い。

▶︎北野武が語る「暴力の時代」 – インタビュー : CINRA.NET

もちろん、暴力の中に笑いの要素も含まれていて北野武いわく「緊張・緊迫した局面だからこそちょっとしたことで笑いが起こる。」表面的な優しさとか虫のいい言葉とか、そんなの全部抜きにして思いっきり心のモヤモヤをぶち壊してくれる映画。

BROTHER


▶︎BROTHER [DVD]

当時、中学校の時に観た時は本当に衝撃的だった。容赦無く人は死んでいくし、なんか加減のない緊張感というか恐怖っていうものが全身に伝わってくるような映画。もちろん、暴力映画といえば「アウトレイジ」が良く取り上げられるけどこの映画も観ていないのであれば必見です。ちなみに、この映画の全貌を「太平洋戦争」と被せているという意見がありかなり同意したので紹介させて頂きます。

▶︎小説、映画、音楽の辛口批評 カッコーの巣の上で BROTHERの本当の観かた 北野武監督

映画に込められたメッセージは「アメリカ批判」であり、山本五十六という大日本帝國海軍の総指揮者が主人公のビートたけしとする説だ。わざわざアメリカで撮影されたことも、非道な暴力シーンにしなければならなかったこともすべてここで説明されている。

キッズリターン


▶︎キッズ・リターン [Blu-ray]

だいぶ古い映画ではあるんだけど北野武映画の中でも珍しい青春映画。出演している金子賢と安藤政信も若い。ボクサーを目指していたマサルに誘われて始めたシンジがボクサーとしての才能に目覚め、逆にマサルは自分の才能に限界を感じてヤクザの道を歩み始める。一旦は別々の道でうまくいき始めた2人だったけど、挫折を経験し上手くいかない毎日に苦しむ。

最後のラストシーンがなんか好きで良く覚えてる。落ちこぼれたはずの2人がまた前を向いて自転車で走りだす(表紙そのまま)、何だか人間臭いというか元気がもらえる

アキレスと亀


▶︎アキレスと亀 [DVD]

足の速いアキレスは理論上、いつまでたっても亀に追いつけない(追いつくまでの時間を永遠に区切ってるだけなんですけど)というゼノンのパラドックスが映画タイトルになっている。

映画の中にはたけしの落書き入門 (とんぼの本)に出てくる絵もあった。画家としていい作品を作り続けようとする主人公と理解し続ける妻が、本当にギャグみたいなことやっていい作品を作ろうと奮闘していく。でも結局は有名になれず最後は自分自身も大やけどを負ってしまう。夢は願えば叶う。そう信じていくら努力しても、芽が出ない人は一生出ることはない。その不条理をアキレスと亀というパラドックスで映画の中に表している。皮肉だけど北野武らしさのある映画。

座頭市


座頭市 <北野武監督作品> [DVD]

座頭市っていろんな人が映画にしているけど、金髪の座頭市はこれが最初で最後だと思う。僕も60過ぎたら金髪にしてみようかなと思ったくらい(笑)カッコよくて斬新だった。もう何年も前に観たきりなんだけど、最後のタップダンスのシーンは異様に頭の中に残っている。北野武らしいエンターテイメントの要素を盛り込んだ傑作に仕上がっている。

もちろん、その男凶暴につきソナチネ3-4X10月とか他にもまだまだ紹介したい作品がたくさんあります。

おまけその1 北野武のおすすめしたいCD

もう少しだけ紹介しておきたいのがCD。北野武自身が歌っている歌もあるし、映画のシーンで使われる久石譲さんのピアノサウンドトラックもある。北野武自身が学生時代から好きなジャズをセレクトしたCDもあったりするんだけど、全体的にあんまり知られていないので改めて紹介してみる。

北野武久石譲 ベストコレクション


▶︎北野映画ベストセレクション joe hisaishi meets kitano films

久石譲さんのピアノ演奏って優しいけど力強さがあって、耳に残るんですよね。このベストセレクションでは菊次郎の夏、BROTHER、あの夏、いちばん静かな海、ソナチネ、キッズリターン、HANA-BIと各映画のサウンドトラックがまとめられている。

個人的にはやっぱり菊次郎の夏のSummerが一番好き。なんか夏の暑さとか田舎の風景とか、セミの鳴き声とか、川の流れとか穏やかだけど胸の中にあるウキウキ感と夕暮れの寂しさみたいなのを一気にすべて表してくれているような音。素敵すぎるの一言。

たけしとジャズ


▶︎たけしとジャズ

北野武が青春時代に愛したジャズをセレクションで27曲集めた1枚。ジャズに疎い人でも最初の一歩として、大人のジャズを知ることができるように配慮された選曲になってます。CDは2枚組になっていて、ジョン・コルトレーン、マイルス・デイヴィス、バド・パウエルなどかなりお洒落なジャズ界の有名人を一気に知れるようになっている。休日の朝にコーヒーでも入れてこのCDを流せば、部屋の中は一瞬にしてジャズバーに様変わりしちゃいます。

ちなみに、2013年にはブルーノートの名演から選曲した2枚組も出てます。リー・モルガン、エルヴィン・ジョーンズ、ノラ・ジョーンズなどなどブルーノートから偏りなくジャズの巨匠たちを選んでいる。というか、これ1枚あればジャズはもう完璧やない?ってくらい。本当にジャズ好きなんだなぁと思わせてくれる。


▶︎たけしとブルーノート

おまけその2 芸人としての北野武

芸人として芸を磨き続けている北野武は本当に尊敬しかない。タップダンスやピアノなど幅広い趣味を持っているところは見習いたいと思う。

志村けんとタップダンスの共演

youtube動画

映画「座頭市」でもタップダンスのシーンがあったけど本当に上手いし練習してるんだなぁと思わせられる。芸能人ってやっぱり人に見せる芸をたくさん持っている人たちであるべきなんだろうなと思う。

映画「菊次郎の夏」ピアノ演奏

youtube動画

菊次郎の夏で流れる映画音楽は誰しも聴いたことがあるはず。実は北野武もひっそりとピアノの練習をしていて弾くことができる。映像見るとわかるけどかなり練習しているんだなぁというのが一発でわかるくらいなめらかに弾けている。不器用っぽいところもあって逆に好感が持てる。これ見て、実は僕もちょっとピアノの練習をしたのは内緒です(笑)

最後に

最後までお読みいただきありがとうございました。

北野武自身は「俺には何の才能もない」と言っていますが、すごく謙虚で貪欲に学ぶ姿勢が常にある人だと思います。そんな北野武を大いに尊敬しつつ、僕も見習うべきところがたくさんあるなと思います。

皮肉で、現実主義で、残酷さをきちんと理解しながらも、必ずオチをつけてきたり、笑があったりととにかく視野も感覚も教養も広い方だなぁと。

もしこのまとめを読んでちょっとでも興味が湧いたら、ぜひ北野武の作品を手に取ってみてください。